4月に東京へ出張した時、いつもなら東京駅からそんなに遠くないホテルを取るのですが、最近は景気上昇や海外からの旅行者が増えているためなのか、ホテルも空きが少なくなってきていて、少し遠いですがようやく当日予約ができた、浅草のビジネスホテルに泊まりました。

 ホテルに夜10時位にチェックインし、バタンキューで眠りに就いたのですが、夜中の2時にトイレの水がちょろちょろ流れている音で目が覚め、トイレの水をもう一度流すためにトイレを開けてみると、すごく汚れている!!夜中の2時過ぎにフロントに電話して、それからフロントのスタッフが修理を始め、修理と掃除が3時くらいに終了。ところが翌朝も、テレビの電源が入らない。また、フロントに電話。冷蔵庫の中に入れてあった水を飲もうと出してみると凍っている。着替えをしていると、掃除のおばちゃんが突然ドアを開ける。「こんなひどいホテルは初めてだ、フロントで一言お詫びがあるだろう」と思っていたが、一言の詫びもなし。ひどい体験でした。

 そんなホテルと対照的なホテル、スーパーホテルの創業者である山本梁介会長の話を聞く機会がありました。

 スーパーホテルは1996年にホテル業界に新規参入し、現在は国内104店舗、海外1店舗。客室稼働率は平均で90%、お客様のリピート率は72%に達していて、10年間増収増益を続けています。お客様の5割が女性客という店舗もあるといいます。サービス産業生産性協議会が発表する顧客満足度指数調査で、スーパーホテルは2009年、2010年と2年連続でビジネスホテル、シティホテルすべてのホテルの中で第1位でした。

 一般的に生産性を向上させれば、顧客満足度は低下し、逆に顧客満足度を上げようとすれば、生産性は低くなるといわれています。スーパーホテルは生産性と顧客満足を両方高める、いわば「二兎を追うこと」を仕組みとして取り組むことに挑戦し続けています。ホテル業界では「非常識」と言われていることに挑戦し続けているのです。

 例えば、客室に電話がない。これだけ携帯電話が普及しているのに、客室に電話がないのはスーパーホテルだけ。ホテルの客室電話は高めの料金設定でチェックアウト時にトラブルが起きやすいうえ、もともとの初期投資が不要になります。

 例えば、ノーキーノーチェックアウトシステム。宿泊代金は自動チェックイン機で前払い。部屋はドアの番号キーに暗証番号を打ち込むことで鍵が開きます。

 例えば、脚のないベッド。客室のベッド下にゴミがたまりやすく、カーペットが汚れやすい。清掃会社の人も交えて対策を練っているとき、「いっそ脚がなければいいのに」と掃除をする女性がいい放った意見を採用しました。ベッドの脚をなくしたことで、1部屋当たりの掃除時間が約1分短縮され、その店舗は91部屋あったので、91分時間の効率アップにつながりました。

 そして「ぐっすり眠れる」ことにこだわっています。ビジネスホテルは、食事を終えて夜の10時過ぎに部屋に入り、朝の8時に出ていくとしたら、ホテル滞在時間は10時間、そのうちの78時間は部屋で眠っていることになります。ベッドは広め、枕は7種類の中から選べるようになっています。さらに、大阪府立大学の健康科学研究室と提携して、「ぐっすり研究所」という機関も設立し、睡眠についての研究もつづけるという力の入れようです。

 他にも、ITを駆使した独特の顧客満足の仕組みを持っています。とはいっても、サービスをするのは仕組みも大事ですが、最終的には人です。「自律型感動人間」という人財目標を設定し、お客様を感動させることができる人財育成に山本会長は全精力を傾けているとのことでした。

 ベッドに脚があって当然、支払いはチェックアウト時でないと無理と、みんなが思ってきました。優れた企業は、一見「バカな」と思ってしまうくらいユニークで、よく聞くと「なるほど」と腑に落ちるような経営をしているといわれます。生産性を上げるには、ベッドの脚をなくすことで1分時間短縮できるという、その1分の積み重ねです。結束機や機械の位置、パレットの位置なども当たり前で考えていませんか。制作や印刷で同じエラーを繰り返していませんか。無駄な検品を当たり前だと思っていませんか。根本的に何をなくせば良いのか、本当にお客様が求めているサービスは何なのか、そのために生産性と顧客満足を両立できる社内改革ができないのか、日々の仕事に疑問を持ちながら、ユニークな我が社独自の仕事を創り出していきたいものです。