知音俳句会 京橋教室

代表 行方克巳様(東京都・中央区)

 

1月18日(木)、京橋区民館で開催された知音俳句会京橋教室にお邪魔しました。知音は行方克巳氏、西村和子氏2人の代表制をとり、京橋教室は行方代表が月に3回、それも昼・夜の部とダブルヘッダーで違うメンバーを計6回直接指導されている。

 この句会は8句出しで、メンバーの互選と並行して、代表が各人の句を添削し講評をするというもの。披講に続いて代表が一人ずつ講評する。

 

▲季節ごとに色を変えるカラフルな御髪の行方代表

 

 

月光の名残の霜を踏んでゐる    庸子

この句は人気があったね。月光と霜の取り合わせは中国の漢詩にある。「牀前月光を看る 疑うらくは是 地上の霜かと 頭を挙げて 山月を望み頭を低れて 故鄕を思う」(皆さんより嘆声が上がる。代表の前職は国語教師。慶應義塾中等部で30年以上にわたり教鞭をとっていた)。牀前はベッドサイドのこと。この詩がベースにあると思う、いい句だね。

松過ぎの二階へ運ぶ輪島塗        重光

正月が終わり、使わなくなった食器を2階に仕舞ったってこと。これ、蔵へ運ぶとか言えばいい。そうしたらさすが重光さんってことになるじゃない(笑)。2階じゃつまらない。

年の市股火鉢して客を待ち        飛雄

「年の市股火鉢して」で、もう句ができている。客を待っているに決まっているから。下五は夕暮れになってきたとか、違う言葉にするともっとおもしろくなる。「客を待ち」では説明になる。

寒に入る金糸雀色の新車来る    周子

湘南ガールで派手だと思ったら、こんな色の車買ったの!? 金糸雀はダメ。新車でしょ?だったらカタカナでカナリア色、そして来るではなく来て。「寒に入るカナリア色の新車来て」。

孫ほどの歳の巫女より破魔矢受く          八坂

自分と同じくらいの歳の巫女からもらったらビックリでしょう(笑)。皆さん、笑い過ぎ。なぜ作者は「孫ほどの」と言ったか、うちの孫くらいの歳だなーと思ったから。だからうれしかった。そこまで話を聞いてから笑うように(笑)。

朝のバス膏薬匂ひ春近し            京佳

これだと、ブチブチという感じで切れる。「春近し膏薬匂ふ朝のバス」ですんなりいく。

人生に旅心あり冬の旅  節子

「人生に旅心あり」はおかしい。人生そのものに旅がある、そして自分は今、冬の旅をしているということなら「人生に旅あり我の冬の旅」。いいじゃない、ちょっとかっこよく直しすぎかな(笑)。

 

▲月刊「知音」花鳥諷詠の伝統に根ざした個性の発揮をめざす

 

 

セーターの後ろ前なり駆け出す子          とよき

セーターを着られるようになった子が、早く遊びたくて駆け出したが、見ると後ろ前になっていたということ。これ「子」はいらない。子どもに決まっている。「おじいちゃん、後ろ前よ〜」なんて言ったら大変、家を出たら戻ってこない(笑)。「セーターの後ろ前なり駆け出せる」。

一品を持ち寄り昼の女正月        妙子

妙子さん、下五は何と読んだ?最近歳時記でも下句をほとんどが「めしょうがつ」と読んでいるが、正しくは「おんなしょうがつ」。なるべく女正月を上五にもってくるように努力する。じゃあどうするか。「女正月一品ずつを持ち寄りて」。昼はいらない。朝からはしないし、夜は女子会とか言って飲んだくれてるもの(笑)。

女正月もそうだが、一番気になるのは当たり前のように使われている「言うなれば」という言葉。これは「もし言うとしたら」の意なので未然形の「言うならば」が正しい。

初鏡ひたひが父に似てきたる    瑠璃

瑠璃さんの句? 女性の句なら少し上品に。「ひたひが父に」だと、禿げあがっている感じがする(笑)。「初鏡ひたひのあたり父に似て」。

シャンパン抜く音に始まり年の饗          瑠璃

「シャンパン抜く」っていうと偉そうに聞こえる。それがさらっと詠めないとシャンパンは抜いてほしくない。今年でもうシャンパンの句は3句目。私なんて独り居だから、シャンパン抜けないの、誰も来ないからさ(笑)。

マフラー暖かさう膝小僧寒さう              いづみ

字数はあっていないが「マフラー暖かさう膝小僧寒さうに」とすると、まとまるけど急におもしろくなくなる。破調のおもしろさのある句。

うしみつの満月ながむ二日かな              いづみ

ながむ、はよくない。じゃあどしたらいい?

メンバー…「見上げ」、「あおぐ」。

なんでみんな行動にしちゃうの。

メンバー…上にあるから。じゃあ「なりし」、「浴びる」。

「浴びる!?」もっとだめ(笑)。「うしみつの満月ありし二日かな」。ふと見上げたところに満月があった、ということ。

神棚へ破魔矢鈴の音こぼしつつ   和音

和音さんは小柄だから、神棚の上に飾るとき精一杯手を上げてちりんちりんと鳴ったということね。鈴というとだいたい鈴の音とするんだけど、これは音の方がいい。「神棚へ破魔矢の鈴の音こぼす」。

 飛び切りの笑顔返され社会鍋  呼瞳

日本人は少ない金額だと恥ずかしいし、多いのは出しにくいし、それで躊躇して通り過ぎてしまう人は多いと思う。いくらあげたの?

作者…100円くらい。あげた何倍もの笑顔が返ってきた(笑)。

「社会鍋横顔ばかり通るなり」という岡本眸さんの句があるけど、いいよね。みんな素通りしちゃうってことがよくわかる。

おでん酒あの頃の謎解けぬまま              京子

これ謎の句ですね(笑)。どうしたんだろう、何これ。

作者…高校の文化祭の劇、いつの間にか配役が決まっていたねという話をしていた。

「解けぬまま」が気になった。「おでん酒あの頃の謎まだ解けぬ」の方がいい。

柚子湯して術後六年恙無く        甲代

もう6年経ったの。大丈夫ですね。甲代さんの俳句は実に性格が出て、真面目な句柄。甲代さんも周子さんも大学の同級生なので、一緒に卒業アルバムに載っている。でも当時はお金がなくてアルバムが買えなかった。同級生同士で結婚したのがいて、ご主人が亡くなった。だから、アルバムをもらったの(笑)。そんなことはどうでもいいんだけど。

 

 

 

積ん読の父の書斎のすきま風    奈津子

そのままになっている亡き父の書斎。たまたまそこに入ったら隙間風がすーっと。懐かしさと寂しさが感じられる。

初鴉東の窓に鳴きにけり            ちづこ

烏は縁起が悪いとか評判がよくないが、元旦に鳴く鴉は初鴉といって縁起がいい。「東の野に炎の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ」という人麻呂の歌があるが、東というと、おめでたい感じが出る。原句はさっぱりしてああそうですかっていう感じだが「東の窓に鳴きけり初鴉」とすると少しかっこよくなる。

搗く朝の臼に張りたる薄氷        章代

この言い方は無理がある。「餅搗きの明日の臼に薄氷」。

作者…餅搗きだと薄氷と季重なりになると思って…。

薄氷は春の季語だが、それほど寒くないときに張っている氷も薄氷というので、この場合の薄氷は季語として考えなくていい。

先日、実家の八街で餅搗きをしたが、3回くらい搗いてやめたら「天皇陛下みたいですね」と言われた(笑)。

枝々のふくら雀も数珠つなぎ     花苗

こういう「も」はなんて言うんだっけ?そう、欲張りの「も」。他にも鳥がいるの?「も」はやめましょう。「枝々にふくら雀の数珠つなぎ」。

数へ日の病院いよよ人多し        洋子

人が多いこと、なんと言う?そう、人混み。「数え日の病院いよよ混み合へる」。

抗菌の手摺掴まされて師走        泉

掴まっているんだけど、掴まされているとした方がおもしろい。

 

 

あれ、少し時間があまった。だったらもっとダジャレ言えばよかった。何か質問のある人?

Q.先生が仰る「俳句としておもしろくない」という意味が、わかるようなわからなような。

A.それは、俳句がわかるとわかるし、おもしろくなる。わかりかけている段階だから、わからない。わかったら私はいらなくなる(笑)。俳句は意味がわかっても何のおもしろさも感じないということがある。また、汚いことや残酷なこと、言っても仕方のないこともある。いくらシビアなことを言ったり、リアルに詠っても、どこかに救われるものがないといけない。それが文芸。

 

当日の行方代表の句

軍靴ならずよ霜柱ざくざくと踏み

これやこの太古の磁場も初景色

男運悪くもなくて酉の市

寒紅の下唇黙らせてゐる

折檻のごとくに蒲団叩きけり

▲常に笑いがあふれる「知音」京橋教室

 

 

★昨年の流行語となった、インスタ映えする髪色でバッグには会員にもらったという大きめのミニーマウス。何かにつけかなり飛んでる代表を、初めて見る方は面食らうかもしれない。句会はと言えば3分に1回は笑いが起こり、さながら笑い塾。時に脱線しながらも、お一人おひとりをしっかり捉え、全体とも相対しながら「愛情あるソフトなこき下ろし」を交え進めていく。直接指導の句会の数もさることながら、他にも吟行、同一季語で30句を詠む「三十句の会」の添削、そして一日「百句の会」もあるのだとか!この昼の句会の後は、明治屋の地下で小一時間ワインと軽食をとり、夜の句会へ戻っていかれた。楽しく教え、学ぶということを肌でつかんでいらっしゃる。

(木戸敦子)