句会・歌会探訪

「青垣」大阪句会 代表 大島 雄作 様(大阪府・豊中市)

 

「青垣」大阪句会

代表 大島雄作様(大阪府・豊中市)

 

 11月3日の文化の日、大阪府教育会館で開催された「青垣」大阪11月句会にお邪魔しました。2007年に創刊した「青垣」は季感を大切にポエジー豊かな句を平易な言葉で詠むことをモットーとしています。

 本日の席題「文」を含む7句出しで11句選、うち1句を特選。高得点句よりその句を採った方が、講評をします。

 

▲以前は新聞記者だった代表大島雄作さま

 

  • 9点

古本屋に探す青春冬夕焼                            雄作

 自分の青春の頃の本が古本になっていて、今晩年にさしかかっている。冬夕焼が鮮やか/青春を探すというのは色々あるが、これはうまい。

  • 6点

小春日や乳母車より犬の貌                      としたか

 子どもだと思って見たら犬だった、そういう感覚のズレというか意外性。

大島…よく見かける光景だが、これは老犬だと思う。犬の足が弱ってきて、乳母車に乗せて散歩。小春日が似つかわしくうまくまとまっている。

いつもカスタネットだつたな秋夕焼        千惠子

 小学校低学年くらいの音楽の時間なのかな、ピアノやバイオリンを弾ける子はわずかで、ほとんどはその他大勢のカスタネット。子ども時代への郷愁、その他大勢の気持ちに共感した。

大島…もう少し何か入れられないかと思ったが、見たことのない句。カスタネットは可愛らしいし悪くない。

 

 

▲季刊「青垣」最新の51号

 

  • 5点

図書館の混みゐて静か冬に入る                            美賛子

 図書館の静謐な感じと、冬に入るという季語がぴったり。

大島…図書館が静かというのは常識。混んでいて静かもその通りだが、少し理屈が入っている。そこは気にはなるが、春夏秋冬では冬が一番似合っているし一応できている。

文士なら早死にもよしふくと汁                            すずめ

 今日の席題の「文」、ちょっと決めすぎな感はあるが、綺麗にできている。ただ、ふくと汁はどうか?/ふぐにあたって早死にしてもいいという、文士たることの本音がよく出ている。

大島…ふくと汁の表記、ふぐ汁のことだと思うがあまり言わない。文士・早死はわかるし、決して悪くはないが、季語が決まり過ぎで採らなかった。

十一文半に銀杏踏まれけり                      雄作

 十一文半がどれくらいかわからないが、銀杏の小ささとの対比がいい。

司会…私十一文半。足大きいです。代表お願いします。

大島…作者です。私小さいです(笑)。

子の尻尾つかめば抜けしハロウィーン     翔子

 何かの仮装をしていて、尻尾を掴んだらそのまま抜けて走っちゃった。

大島…どういうタイミングで掴んだのかしっぽが抜けて、子どもも掴んだ人もびっくりしたという、ハロウィーンらしい景。

乳牛のモンローウォーク草紅葉                            としたか

 乳牛の歩き方をモンローウォークと言ったその発見に驚いた。

大島…こう言えないこともないが、ちょっと面白すぎ?という気がした。

後もどりできぬ文明蚯蚓鳴く                  美賛子

 季語も調子もよくて一回読んだら覚える句、さらに席題だったという驚き。

大島…席題と思わず採った。利便性を追求してきた人間、元に戻ることはできないという気持ち。そこに悲しいというか、寂しい季語の「蚯蚓鳴く」。いい季語を選ばれた。

  • 4点

封緘の糊を塗り足す一葉忌                   英典

 糊を塗り足すという繊細なところと、深読みしたら一葉はこういう内職をしていたかもしれないと思ったり。趣味的かなぁとは思ったが、特選に。

パンくづを撒いて案山子を審査せり         希妙

 この案山子は本当にすずめを追い払えるのだろうか、という遊び心がよくて特選に。

大島…「審査」とあるので、案山子コンテストだと思う。パンくづを撒くとはすずめを集めること。変わった発想とは思ったが、ほんまとは思えなかった。

十円のガムの当たりや小六月                  一樹

 駄菓子屋を回想した句かと思った。子ども達のほっこりした感じがいい。

大島…悪くはないが、その程度ではあまり驚かないなと思って通過した。

熱燗や今も志望は文学部                          翔子

 今も文学部が諦めきれないと、お酒を飲みながら振り返っている。

大島…まとまってはいるが、志望は文学部といっても今更入れるわけではなし、どうなんだろうなと思った句。

朝寒やふはふはと食ふ伊勢うどん                        千惠子

 伊勢うどんは柔らかいので、「ふはふは」と急いで食べた感じが出ている。

大島…伊勢うどんは太めで麺が柔らかく、讃岐うどんの固さとは逆。そのあたりを「ふはふは」が柔らかさも、熱いものを食べている感じも表している。「朝寒」の季語は似合いすぎかもしれないが悪くない。

水洟や紙ひかうきの急降下                      英典

 水洟で頼りない心持ちになっている時に、紙飛行機を見ていたらぐんと落ちて、余計心もとない気持ちになったということか。

司会…紙飛行機で鼻かんでるんちゃう?(笑)

大島…水洟という季語であまりない句で、取り合わせも面白い。紙飛行機を飛ばしても、なかなか上手くいかないことと、自分の体調が悪いこととの関係で作ったのか。

酔芙蓉土に一献傾けん                              希妙

 酔芙蓉がお酒を飲んだように赤く見えることと絡めた面白い句。

大島…気持ちいい夕暮れになって縁側でお酒を楽しんでいる。酔芙蓉の色が変わっていく様を見ながら盃を垂らして、その酒を含んだ土でまたきれいな色をつけてくれよと思っている、大人の句のような気がした。

  • 3点

カルデラは地球のにきび鳥渡る                            清吾

 季語が大きいかと思ったが、大きな目でみたらカルデラはそんな感じか。

大島…スケールの大きい句だと思うが、カルデラはくぼんでいる、にきびは吹き出物みたいなもの。他の表現があったのでは?という気がする。

文机の向きを変へたる今朝の冬                         茂

 冬になり文机を明るい方へ向きを変えた動きがわかる。

大島…悪くないが、中七まで割と見る表現。「今朝の冬」も、どの程度効いているかわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほかの句

マネキンのぽつと口開け秋の声                      三江子

 マネキンがぽっと口を開けている状況をとらえた面白さ。

大島…マネキンが声には出せないが何か喋ったみたい、ということを感じた季語の置き方か?薄く口を開けているマネキンは見たことあるが、ぽっとじゃないと思う。

男性…ポットじゃない、急須くらい(笑)。

男性…万事休すやな。

冬の蛾や終電過ぎのイートイン                          すずめ

 新しい句。終電を逃してコンビニのイートインでパンをかじっている。失敗したなぁ~飲みすぎたなぁ~と思っていると蛾が。情景が生々しい。

大島…大都会の現代の句。朝までいるのかわからないが、冬の蛾と合わせて、都会の中でやるせない孤独を感じているという像が浮かんで特選に。

海に入る川の明るき時雨かな                  清吾

 なにも言っていないほどシンプルだが、時雨が効いている。

大島…読んだときにつっかえることもなく調べも句の姿もいい。ただ「明るき」と「時雨」はどうかということと、類型・類想感を感じて採らなかった。

花八ツ手きらりと母の糸切歯                  悦子

 佇まいがいいと思ったが「きらり」がひっかかった。

大島…花八ツ手と母の裁縫は似合っているが「きらり」はどうかな。

女性…糸噛んだんちがいます?金歯ですかね。

大島…それでは面白くない(笑)。

色白は要注意なり毒茸                            弥生

 女性のことかなぁと思って読んでいったら突然「毒茸」が出てきて、あっと驚かせる。なかなかの面白さ。

大島…一見美味しそうだが色白は気を付けなさいよ、と茸の説明をされたような感じ。

籐椅子に父の煙管の匂ひあり                  直水

 煙管の匂いでお父さんを偲ばれていることが出ている。

大島…籐椅子と父の匂いはいいと思うが、籐椅子は夏の季語。間もなく冬だという時期にいかがなものかと思うし、煙管はいつの時代の父?(笑)今は落語でしか出てこない。葉巻だったらまだわかるが。

買ひ足しの一円切手神の留守                  あゆみ

 10月からハガキが1円上がって63円に。1円切手また貼らないかんのかと。神の留守だから隙をつかれたなとそんな感覚。

大島…数年前に葉書が上がった時に、2円切手を貼った。それと同じやと思って。

エイトビート聴きつつ外は秋の雨                      石亭

 外は明るいほうがエイトビートは似合うと思うが、「秋の雨」と逆に言ったところが面白い。

大島…「外は」は特にいらない。室内で聴いていて、外を見たらいつの間にか秋の雨、目線の動きは感じるが。

 

採血の脈の浮き出ず神の留守                  英典

林檎捥ぐ風に傷みしもの踏んで                         雄作

銀河濃し人は地面に線引いて                  清吾

死にたがる老人ばかり今年酒                  三江子

雑巾を罰する如く捩り冬                      ずめ

やはらかく年を取りたし龍の玉                        雄作

展開図のやうに蟷螂水に浮く                  としたか

冬帽子心壊れし人に添ふ                    千惠子

木犀の香りの壺となりし村                    千惠子

雀斑の濃くなる夕べ木の実降る                    朱夏

冬めくや匂ひ袋の香の切れて                  英典

 

 

▲通信句会2つ含めた7句会すべてを代表が指導

 

  • 文字にすると、きつく感じるかもしれないが、現場は関西弁が縦横無尽に飛び交う終始和やかなムード。大島代表のぶっきらぼうのようでいて、言語明瞭かつ的確で愛ある指導は、簡にして要を得ている。その証拠に、メンバーのお一人がこの度第34回「俳壇賞」の受賞が決定し、聞けば「青垣」からは4人目とのこと。以前、大島代表が間に立ってくださり会員の句集をお手伝いした際は、きれいな原稿で訂正は全くなし。緻密で、過不足がない。上達したい方にはぜひお勧めしたい会だ。(木戸敦子)
戻る
TOPページへ戻る